私の山に対する考え方

[ 2018年6月18日(月) ]

今日は少し長文ではありますが、以前まとめていた「私の山に対する考え方」をブログに掲載いたします。林業について書いていますので、知識の乏しい方には難解かもしれませんが、取り敢えず読んでみて下さい。

私は、「産業興し」を絶えず考えていますが、庄原市にあるものを活かすことを原則としています。誰もが直ぐに、「農林業の振興」と言いますが、儲からない農業と林業というイメージが定着しているのが現状です。しかし、私は敢えて、林業の勉強をすることにしました。それは、庄原市の面積の84%を森林が占めているからです。それも、戦後の植林政策により43,500haもの人工林が伐期を迎えようとしていたからです。
私は林業に関しては全くの素人でしたから、どうして林業が衰退してきたのかを調査研究しました。第二次世界大戦により山の木は伐採され、戦後の住宅復興に供する木材が不足していたので、外国産木材の輸入が始まり、同時並行で、国を挙げての植林政策が始まったのです。現在、日本全国の山には50年から60年経った用材となる植林した針葉樹がありますが、産業構造の変化もあり、山主が山に入らなくなっていきました。その原因の一つは、「山は儲からない」という風評が全国的に蔓延したことがあります。確かに、昭和39年の輸入全面自由化以降は低価格の輸入材がドンドン入ってくる訳ですから、山主が山の木を伐採しなくなっていったのも事実ではあります。

私はどうしたら人々が山に入って働けるのか考えていた頃は、単純に森林組合が主体で動けば山が儲かることになるのではと思っていました。しかし、どうも森林組合に任せていては山主には殆ど配当が入って来ないみたいだと分かってきました。あれだけ補助金を貰っていながら、どうしてなのか調べ始めました。作業道が整備されていないから作業道が必要だと分かりました。次に、手で木を伐っていては効率が悪いから高性能林業機械が必要だと彼らは要求してきました。伐った木の市場価格が安いから運賃も出ないから運賃補助を要求してきます。林業従事者は日給月給だから定着しないので、月給にするから補助金が欲しいと言います。こうやって事業を行った結果、何とか黒字がでましたと報告がありますが、売上額の倍の補助金が入っていることもあるのです。
これは私の作り話ではありません。そして、国内の森林組合が全てそうである訳でもありません。お隣の三次地方森林組合は県内で一番健全な森林組合と言われています。それは、京都府にある日吉町森林組合の指導を受けていることも要因ではあります。日吉町森林組合は日本一の生産効率を誇る組合ですし、全国の森林組合のお手本でもあります。(林野庁は日吉町方式として推奨している)が、これにも問題はあります。補助金を上手く活用しているのは事実ですが、優秀な素材生産業者にはなっていますが、長伐期施業ではなく、かなり早い段階で山は皆伐の方向になると考えられます。高性能林業機械を入れるための作業道(路網)整備は過間伐になりますから、災害の危険性が高くなると考えられます。
つまり、生産効率を高めるということは山を破壊することにも通じる部分があるのです。ですから、各地の森林組合や林業経営者たちは、独自のやり方で森林経営をしているのです。それも、最低でも3代先を見据えて。あるいは、200年先というロマンに満ちた経営者も多くいらっしゃいます。

近頃脚光を浴びている林業経営のスタイルがあります。それは、自伐型林業経営という、言うなれば、昔ながらの林業スタイルですかね。昔なら、手鋸で伐り倒して馬車(木馬)で運び出していたのでしょうが、今は、チェンソーで間伐し、ユンボで作業道を敷設しながら、小型の集材機で運び出し、2トンダンプで市場や製材所に販売に行くというスタイルです。中古で揃えると500~600万円程ですし、年間経費も燃料代をいれても50万円程度だそうです。驚きは、3年目くらいになると、1日3本の間伐材を販売すると3万円程度の収入となり、年間400~500万円の収入は十分可能とのことです。先祖が植林してくれた山を所有していたり、任された山があることが前提ではありますが、結構、そんな山はあるのです。任されて山の木を販売した場合、1割が山主さんの受取分だそうです。

ここから本題に入って行きます。

2011年3月11日に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故により一気に導入が促進された再生可能エレルギーによる発電。その中でも特に、バイオマス発電に強い興味が湧きました。それは、以前、ドイツのユーンデ村のメタンガス発酵による発電の記事を雑誌で読んだことがあったからです。私は、2014年2月にユーンデ村を訪ね、牛糞などからでるメタンガスを燃焼することによる、発電+熱供給のシステムを視察しました。帰国後直ぐに、一般質問でメタンガス発酵による発電システム+熱供給による産業興しを提案しましたが、日本では、メタンガス発酵後の消化液を肥料とすることが困難であることが判明しましたので、現在は、思考を停止している状態です。しかし近い将来、畜産業の最大の課題である糞尿処理を考えるなら、メタンガス発酵による発電+熱供給こそが課題解決の決め手であるとの認識は今も変わりませんので、何としても消化液を安価に処理できる技術開発に期待しています。現在の処理方法は、下水処理して川に放流しています。全国で唯一稼働しているプラントは、大分県日田市にある豚糞+生ゴミによる施設があります。

再生可能エレルギーとは、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどを指しますが、チップやペレットによる発電はバイオマスに分類されます。太陽光も風力も地熱も、一度プラントが出来上がれば殆ど労働者を必要としない装置型産業と私は考えます。

では、私のアイデアをお話ししましょう。

私は山の中に小型のバイオマス発電所を建設したいのです。出来るだけ多くの人たちが働ける発電所を。そして、発電の際に放出される排熱により新たな農業を目指します。つまり、排熱を熱交換器で変換することでハウス内の冷暖房に使える様になりますので、野菜や果物の周年栽培が可能となります。
ここまでは相当に早い段階から考えていたのですが、問題は、発電機を動かす燃料だったのです。24時間安定的に発電機に供給できる燃料は何か。その答えは、ドイツにありました。2015年2月に訪問したドイツ南部の小さな村、「ザンクトペーター」に私が描いていた発電+熱利用の施設が稼働していたのです。
ブルクハルト社製の発電機はペレットをガス化して発電する仕組みで、排熱は別のペレットボイラーで加熱してタンクに貯めて各家庭に配管によりお湯を配るというものでした。24時間完全に無人化状態で稼働する装置で、運営母体は、住民出資の会社です。ドイツの風力発電や太陽光発電も民間資本の会社経営や組合が主体となっており、少し大型になるとエレルギー公社を設立しています。
幸いに、私はそのシステムを開発した中心的人物から仕組みを詳しく聞くことができましたし、彼は森林官をしていたので、山の中に入って実際に伐採のやり方や移動式チッパーによるチップ製造のやり方を見ることもできました。
ドイツの場合は、熱供給が完全にメインで、熱エネルギーを灯油の量に換算して説明してくれました。ドイツの売電価格は大規模なものほど安く設定されていますので、現在は多くの発電所が経営破綻しています。ドイツでは、環境にやさしいことと、経済が地域で循環することが重要視されています。
私は翌年の2016年2月に再度、ドイツに行きました。今回は、ブルクハルト社の本社を訪ねることと、ドイツ各地にあるブルクハルト社製の発電機+熱供給装置の視察でしたが、はるばる日本から来たのだからと、ペレットの大型製造工場を紹介していただき、視察することができました。そして、最大の収穫は、ブルクハルト本社で、「日本の群馬県上野村でブルクハルト社の機械が稼働している」との情報をゲットしたことです。日本の総代理店も教えていただき、帰って直ぐに連絡をいれ、上野村を訪問しましが、感動という言葉では言い表せない程の衝撃をうけました。上野村産の木材から製造したペレットで発電機が動いていることと、排熱による冷暖房で、菌床椎茸の周年栽培が行われていること。更に、60名からの新規雇用は殆どがIターン者であることなどを聞くにつけ、「これこそが私が求めていたもの」と、確信しました。

ペレットガス化発電+熱供給による産業興しで、考えられる課題

国内の林業振興策として行うのだが、ペレット製造に関する統一規格の導入
ペレットの素材(木材)をペレットに加工する技術開発(特に広葉樹)
(広葉樹は、30年程度で伐期を迎え、自然萌芽するので植林の必要がない)
木材を安定的に供給できる体制の構築。森林組合、木材業社、自伐型林家等
山の境界確定(地籍調査)、大型作業道整備、間伐技術の向上、伐採技術の向上等、森林作業従事者の養成、森林官(フォレスター制の導入)の養成
プラント設計・設備に関する技術者の養成
(ドイツでは大学に専門家を養成する学科がある)